情報の規制によって「今ここ」に集中する

​人間は、自然から切り離された現代社会の環境にまだ適応できていません。

その最大の理由は、私たちの脳が処理できる限界を超えた「不自然な情報」が多すぎることにあります。​特に、私たちの脳に無意識の負荷を与え続けているのが、以下の「3つの情報」です。

① 文字:無制限のアクセスがもたらす脳の疲労

文字は情報を圧縮して伝える優れた手段であり、科学文明を築くために不可欠なものでした。しかし、視界に入る文字が多すぎることは、脳の認知リソースを著しく消費します。

スマートフォンが発明される以前は、書籍や新聞など、文字情報へのアクセスには物理的な制限がありました。しかし現代は、画面をスクロールしたりアプリを切り替えたりするだけで、ほぼ無限の文字情報にアクセスできてしまいます。この絶え間ない情報の入力は、脳を常に興奮状態にし、休息を奪っています。 

​② 色:本能を刺激するマーケティング

自然界において、赤や黄色など「目立つ色」がついているものは、熟した果実(食物)か、毒を持つ生物(敵)のいずれかでした。つまり、鮮やかな色は「生存に直結する重要な情報源」として本能に訴えかける働きがあります。

一方で、かつての自然環境の大部分は、土や木などの茶色、緑色といった刺激の少ない色で構成されていました。​しかし、現代の街を歩けば、看板に赤色や黄色など、人間の本能を刺激する色が溢れています。

これらは生存に役立つ情報ではないにもかかわらず、私たちの自律神経を不必要に刺激し続けています。この「色の配置」はビジネスの場でも利用されており、商品のパッケージを発色良く見せたり、スマートフォンの通知バッジを赤色にしたりすることで、私たちの注意力を強制的に奪っているのです。

​③ 人工物:均一化された形状による認知負荷

自然界の構成物(木々、葉の脈、海岸線など)は、不規則でありながら調和のとれた「フラクタル構造」を持っています。人間の脳は、この自然の造形を見ることでリラックスするように進化してきました。

しかし、科学技術の発達により生み出された現代の人工物は、直線的で不自然に均一化されています。この過度な均一性と直線的なデザインは、本来の自然界には存在しないため、脳に違和感をもたらし、自覚できないレベルの微細なストレスとして蓄積されていきます。

まとめ:情報の規制と自然への回帰

これらの「文字」「色」「人工物」は、自然界には存在しない密度で、日々爆発的に身の回りに増え続けています。

生存や繁殖においてそれほど重要ではない情報に、私たちの脳は処理能力を奪われ、負荷を与えられ続けているのです。​先進国において物質的に豊かであるにもかかわらず幸福度が低い理由の一つは、こうした不自然な情報の爆発的な増加による「脳の疲労」にあると考えられます。

​この問題の根本的な対処法は、情報の入力経路を物理的に遮断することです。意図的にスマートフォンなどの電子機器から離れ、自然の中に身を置くこと。過剰な情報を規制することで初めて、私たちは「今ここ」に集中し、本来の生体システムを回復させることができるのです。

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