かつて、僕がウイスキー蒸留所で働いていた時期に、仕事の多大なストレスからメンタルを病んでしまったことがあります。
当時は働きながら必死にメンタルを改善する方法を学び、毎日それを実行し続けました。そのときの経験を通して、人間の「心」という曖昧なものに対して、ある結論に行き着きました。
それは、メンタルとは決して気合や根性の問題ではなく、「自らの身体にかかっている様々な負荷を感覚化してくれる『計測器』のようなものである」という事実です。
1. 生体システムを守るための「ブレーキ」
睡眠が不足したり、十分な栄養(食料)が摂れていなかったりすると、人間の身体は客観的にパフォーマンスを落とします。さらに過労や対人ストレスといった負荷が限界値を超えそうになると、人間の脳は生体を守るために、強制的な「ブレーキ」を踏みます。
これこそが「メンタルが悪化する(落ち込む)」という現象の正体です。 つまり、メンタルが落ち込むこと自体は決して悪いことではなく、防衛本能が正常に働いている証拠なのです。それは「今の生活環境や身体の状態に、何か根本的な問題があるぞ」ということを教えてくれる、非常に優秀なアラーム機能と言えます。
2. アラームは「原因」までは教えてくれない
しかし、このアラーム機能には一つだけ厄介な仕様があります。 それは、「何か問題がある」という警告音は鳴らしてくれますが、「何が原因なのか?」という具体的な箇所までは教えてくれず、ましてや勝手に状況を改善してくれるわけでもないということです。
アラームが鳴った時、それが睡眠不足によるものなのか、栄養の偏りなのか、それとも運動不足からくる自律神経の乱れなのか。私たちはその警告音を冷静に聞き分け、自らの行動や環境を客観的に分析し、原因を特定する必要があります。
3. 「安価なドーパミン」で警告音をかき消す危険性
ここで現代人が最も陥りやすい罠があります。 メンタルが落ち込んでいる(アラームが鳴っている)時、多くの人はSNSを延々と眺めたり、ファーストフードを暴飲暴食したりして、その不快感を紛らわそうとします。
以前のブログでも書いた通り、これらは脳に「安価なドーパミン」を分泌させる超正常刺激です。これをメンタル回復の手段に使うことは、いわば「火災報知器が鳴っているのに、火を消そうとせず、さらに火災を広げる」ことと同じ行為です。一時的に気分が紛れても、根本的なエラーは放置されているため、いずれ生体は完全にショートしてしまいます。
まとめ
メンタルの悪化を感じた時は、安易な快楽に逃げるのではなく、人間の本来の仕様(ハードウェア)に沿った行動で根本的な修復を図ることが唯一の解決策です。
クリーンで健康的な食事、十分な睡眠、適度な物理的負荷(運動)、他者との関わり、そして自然の中で過ごすこと(グリーンエクササイズ)。これらをバランスよく日常に組み込み、エラーの要因を一つずつ潰していくこと。
メンタルの不調を自己否定の理由にするのではなく、自らの身体や環境を最適化するための「指標」として活用していく視点こそが、現代を生き抜く上で最も重要なライフハックだと考えています。

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